労務Q&A

平成21年2月号

労働時間
株式会社コンサルティング・オフィス
中小企業診断士 神田幸男
   

 今 厚生労働省の推計によりますと、フルタイムパートや契約社員など週の所定労働時間が正社員などと同一の有期契約労働者数は、平成19年に約310万人に達したといわれます。 これらの労働者については、契約更新や雇止めなどに伴う特有のトラブルの防止のために適正な雇用管理が求められます。 そこで今月号の「労務何でもQ&A」では、フルタイムで働く有期契約労働者の雇用管理に関する相談に焦点を当てて回答・解説いたします。


Q1 当社は、昨年の11月にフルタイムパートを1名採用したのですが、賃金や労働時間及び契約期間(1年)などについては口頭で説明し、特に契約書は交わしておりません。 そのパートが工場前に貼り出してある「パート募集」の貼り紙を見て応募してきたので、その場で簡単な面接を行って採用したために正式な「雇い入れ通知書(雇用契約書)」を取り交わしておりません。 今後はパート労働法などの法令等を遵守していくためのポイントについて、回答をお願いします。

A1 多くの場合、フルタイム有期契約労働者には、原則として雇用期間が定められていること、業務が特定されていることなどの特徴があります。募集・採用にあたっては、これらの基本的な事項を将来誤解が生じないよう確認することが必要となります。  まず、労働者の募集の際は、(1)労働契約の期間、(2)就業場所、従事すべき業務の内容、(3)始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、(4)賃金の額、(5)健康保険等の適用――に関する事項を書面交付または電子メールにより明示しなければなりません(職業安定法第5条の3、同法施行規則第4条の2)。  一方、労働契約の締結の際は、労働者に対し、労働契約の期間に関する事項、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません(労働基準法第15条第1項)。  特に、@労働契約の期間、A就業の場所、従事すべき業務、B始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換、C賃金(退職手当て及び臨時に支払われる賃金、賞与などを除きます)の決定、計算及び支払い方法、賃金の締め切り及び支払い時期、D退職(解雇の事由を含みます)――に関する事項について書面明示が義務づけられています。  ガイドラインでは、@〜D以外の昇給、退職手当、賞与の有無などにも、文書明示を求めています。また、Cなどの待遇決定については、短時間労働者から求められた場合は事業主に説明義務が課せられていますので(パートタイム労働法第13条)、「事業主は、有期契約労働者から求めがあった場合には、その待遇を決定するにあたって考慮した事項を説明するべき」としています。


Q2 世間では、有期契約社員の解雇などが問題となっていますが、当社にも有期労働契約のパートタイム労働者がいますので、有期労働契約の更新や雇止めに関するトラブルを未然に防ぐためのポイントについて回答をお願いします。

A2 有期労働契約の更新・雇止めに関するトラブルを未然に防ぐために、労働基準法第14条第2項に基づいて定められた「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」第1条では、有期労働契約の締結に際して、使用者が更新の有無を明示しなければならないとされています。また、更新する場合がある旨を明示したときは、更新の判断基準も明示しなければならないとされています。  具体的に明示すべき事項としては、@更新の有無、A更新する場合またはしない場合の判断基準が掲げられています。  これらの事項については、有期労働契約を締結する労働者が、契約期間満了後の自らの雇用継続の可能性について一定程度予見できるものであることが必要とされます。  具体的には、同告示の施行通達及びガイドラインにおいて、更新の有無の明示の例として、(a)自動的に更新する、(b)更新する場合があり得る、(c)契約の更新はしない――の3つが示されています。  また、更新する場合がある場合は、その判断基準を明示しなければなりませんが、その判断基準としては、(a)契約期間満了時の業務量により判断する、(b)労働者の勤務成績、態度により判断する、(c)労働者の能力により判断する、(d)会社の経営状況により判断する、(e)従事している業務の進捗状況により判断する―などが示されています。  ただし、会社の明示した判断基準が客観性や合理性に欠ける場合は、その基準に基づく更新の拒否は、無効とされると考えられます。  なお、契約締結後に、@及びAの事項を変更する場合には、速やかに労働者に変更内容を明示しなければなりませんが、この場合、いったん契約で決めた内容を変更することになるため、原則として、当該労働者の同意が必要といえましょう。  前述のとおり、労働基準法は、労働契約の締結時に労働契約期間、就業場所などの書面明示を義務づけていますが、個別労働関係紛争を防止するためには、@労働契約の締結前に労働条件を提示して説明する。A契約途中で労働条件を変更しようとするときに変更後の労働条件を提示して説明する――など、労働者と使用者が労働契約の内容の理解を深めて、契約内容があいまいなまま労働契約関係が継続することのないようにすることが重要となります。  このため、労働契約法第4条第1項では、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、理解を深めるようにすることが使用者の責務として規定されています。  この点について、ガイドラインでは、「労働契約締結時または労働契約締結後において就業環境や労働条件が大きく変わる場面において、使用者がそれを説明しまたは労働者の求めに応じて誠実に回答すること、労働条件等の変更が行われずとも、労働者が就業規則に記載されている労働条件について説明を求めた場合に使用者がその内容を説明することが考えられます」としています。  また、労働契約法第4条第2項には、労働者及び使用者は、労働契約の内容について、できる限り書面により確認することが定められています。この点について、ガイドラインでは、「労使で話し合ったうえで、労働条件を記載した書面を労働者に交付することなどが考えられます」としています。 「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の概要をまとめておきます。 (1)契約締結時の明示事項等(第1条)  @有期労働契約の締結に際し、その契約の更新の有無を明示しなければならない。  A有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、労働者に対して、契約を「更新する場合」または「しない場合」の判断基準を明示しなければならない。  B有期労働契約の締結後に@またはAについて変更する場合には、労働者に対して速やかにその内容を明示しなければならない。 (2)雇止めの予告(第2条) 使用者は、契約締結時に、その契約を更新する旨を明示していた有期労働契約(当該契約が3回以上更新されている場合、または1年を超えて継続して雇用している場合に限る)を更新しない場合には、少なくとも契約期間が満了する日の30日前までにその予告をしなければならない。 (3)雇止めの理由の明示(第3条)  @雇止めの予告をしたのちに、労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければならない。  A雇止めののちに労働者から請求された場合も同様に遅滞なく交付しなければならない。 (4)契約期間についての配慮(第4条)  契約を1回以上更新し、1年以上継続して雇用している有期契約労働者との契約を更新しようとする場合は、契約の実態及びその労働者希望に応じて、契約期間をできる限り長くするように努めなければならない。