労務Q&A

平成21年4月号

三六協定
株式会社コンサルティング・オフィス
中小企業診断士 神田幸男
   

  労働基準法は労働時間・休日について、1日8時間、1週40時間及び週1回の休日の原則を定め、これに対して同法第36条は「労使協定を締結し、行政官庁に届け出た場合においては、その協定に定めるところによって労働時間を延長し、または休日に労働させることができる。」としています。
残業や休日労働を行なう場合の手続きを定めている「三六協定」についてそのポイントを解説します。


Q1 「三六協定が必要となる労働の範囲について説明してください。」

A1 三六協定の締結・届け出が必要となるのは、法定労働時間を超えて労働させる場合及び法定休日に労働させる場合です。
そこで、これをごく普通の定期的な労働時間制度を例にとって、具体的に見てみましょう。
 始業午前9時、終業午後5時(うち休憩1時間)、休日は毎週土曜、日曜日及び祝日(他に年末年始など就業規則等で定める指定休日あり)の事業場のケースとします。
 この事業場において、日々の残業が1時間以内ならば、1日の実労働時間が8時間を超えることなく、また、週の実労働時間が40時間を超えることもありません。したがって、この場合には、三六協定は不要です。一方、週に1日だけ2時間の残業がある場合は、週の実労働時間は40時間以内ですが、残業がある日は9時間労働となりますから、三六協定が必要です。
 次に、所定休日である土曜・日曜日に労働するケースを考えてみましょう。月曜日から金曜日まで残業が無く、土曜日に労働する場合、土曜日の労働時間が5時間以内ならば、週の実労働時間は40時間以内です。また、この週の日曜日に労働が無ければ、週1回の法定休日も与えられていますから、三六協定は不要です。
 しかし、土曜日の労働が5時間を超える場合には、週の実労働時間が40時間を超えるため、三六協定が必要です。
 これら土曜日に労働するケースは、これを日曜日や祝日に置き換えても同じです。では、同一週の土曜・日曜日の両日とも労働する場合はどうでしょうか。その場合、土曜・日曜日の労働時間の合計が5時間以内ならば、週40時間以内です。しかし、この週には休日が無くなってしまいます。つまり、土曜・日曜日の労働のうち、1日については法定休日に労働させることになり、三六協定が必要となります。


Q2 当社は本社を所轄する労働基準監督署へ三六協定を届け出てありますが、埼玉の工場は三六協定を届け出ておりません。何か問題となるでしょうか。また、三六協定における協定事項について回答をお願いします。」

A2 三六協定は、時間外労働や休日労働を適法に行なうために締結・届け出るものです。労働基準法では、三六協定の締結単位を個々の事業場とすることと規定しています。
 同法では、法を適用するうえでの運用の基本方針について、「個々の事業に対して労働基準法を適用するに際しては、当該事業の名称または経営主体等にかかわることなく、相関連して一体をなす労働の態様によって事業としての適用を定める」とし、「事業とは、工場、鉱山、事務所、店舗等のごとく一定の場所において相関連する組織のもとに業として継続的に行なわれる作業の一体をいう」としています。
 そして、「一の事業であるか否かは主として場所的概念によって決定すべきもので、同一場所にあるものは原則として分割することなく一個の事業とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業とする」としています。
 したがって、本社と工場が離れた場所にあるような場合には、それぞれで三六協定を締結しなければなりませんが、逆に、一つの場所に事務所と工場が別棟であるような場合には、1つの三六協定で足ります。
 労働基準法では、三六協定で協定すべき事項として、
@時間外または休日の労働をさせる必要のある具体的事由
A業務の種類
B労働者の数
C1日及び1日を超える一定の期間についての延長をすることができる時間
D法定休日のうち労働させることができる休日
E協定の有効期間
 ――を掲げています。
 なお、この他にも、時間外労働を行なわせない日を具体的に定めたり、休日労働に対する代休の付与などといった、時間外労働または休日労働をさせる場合の諸条件について、労使間で任意に協定するケースもあります。

 

Q3 「三六協定における延長時間に限度時間のようなものはあるのですか、回答をお願いします。」

 協定すべき事項のなかで、最も重要といえるのが時間外労働の延長時間数と休日労働の口数です。時間外労働の時間数については、@1日、A1日を超える一定の期間――の両方を協定しなければなりません。
1日の延長時間数については、法律などによる制限は設けられていません。
協定すべき事項のなかで、とかく問題となるのが「1日を超える一定期間についての延長時間」です。これに関しては、労働基準法第36条第2項に基づく厚生労働省告示によって、一定期間の区分やそれに応じた限度時間が示されています。
それによれば、「一定期間」は、@1日を超え3ヶ月以内の期間、A1年間の2種類とされています。したがって、協定ではこの2種類について、それぞれ延長時間を定めなければなりません。なお、1日を超える3ヶ月以内の期間については、1週間、2週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月のいずれかによることが原則とされています。
 そして、上記の一定期間について、各々限度時間が定められています。たとえば、1週間では15時間、1ヶ月では45時間、1年間では360時間などとなっています。
 なお、協定の有効期間の始期から1年未満で事業が完了するような場合には、1年間についての協定は必要なく、そのような場合は、事業完了までの期間について協定することになります。
 労働基準法第36条第3項は、三六協定で労働時間の延長を定めるにあたっては、協定内容が、この限度基準告示に「適合したものとなるようにしなければならない」と規定しています。